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詩人の紹介「郷土望景詩」

最終更新日:2011年9月30日(金)ページID:003274印刷する

詩人の紹介「郷土望景詩」について掲載しています。

中学の校庭

われの中学にありたる日は
艶(なま)めく情熱になやみたり
いかりて書物をなげすて
ひとり校庭の草に寝ころび居しが
なにものの哀傷ぞ
はるかに青きを飛びさり
天日(てんじつ)直射して熱く帽子に照りぬ。

波宜亭

少年の日は物に感ぜしや
われは波宜亭(はぎてい)の二階によりて
かなしき情歓の思ひにしづめり。
その亭の庭にも草木(さうもく)茂み
風ふき渡りてばうばうたれども
かのふるき待たれびとありやなしや。
いにしへの日には鉛筆もて
欄干(おばしま)にさへ記せし名なり。

二子山附近

われの悔恨は酢(す)えたり
さびしく蒲公英(たんぽぽ)の茎を噛まんや。
ひとり畝道をあるき
つかれて野中の丘に坐すれば
なにごとの眺望かゆいて消えざるなし。
たちまち遠景を汽車のはしりて
われの心境は動擾せり。

才川町

(十二月下旬)

空に光つた山脈(やまなみ)
それに白く雪風
このごろは道も悪く
道も雪解けにぬかつてゐる。
わたしの暗い故郷の都会
ならべる町家の家並のうへに
かの火見櫓をのぞめるごとく
はや松飾りせる軒をこえて
才川町こえて赤城をみる。
この北に向へる場末の窓々
そは黒く煤にとざせよ
日はや霜にくれて
荷車巷路に多く通る。

小出新道

ここに道路の新開せるは
直(ちょく)として市街に通ずるならん。
われこの新道の交路に立てど
さびしき四方(よも)の地平をきはめず
暗鬱なる日かな
天日家並の軒に低くして
林の雑木まばらに伐られたり。
いかんぞ いかんぞ思惟をかへさん
われの叛きて行かざる道に
新しき樹木みな伐られたり。

新前橋駅

野に新しき停車場は建てられたり
便所の扉(とびら)風にふかれ
ペンキの匂ひ草いきれの中に強しや。
烈烈たる日かな
われこの停車場に来りて口の渇きにたへず
いづこに氷を喰(は)まむとして売る店を見ず
ばうばうたる麦の遠きに連なりながれたり。
いかなればわれの望めるものはあらざるか
憂愁の暦は酢え
心はげしき苦痛にたへずして旅に出でんとす。
ああこの古びたる鞄をさげてよろめけども
われは瘠犬のごとくして憫れむ人もあらじや。
いま日は構外の野景に高く
農夫らの鋤に蒲公英の茎は刈られ倒されたり。
われひとり寂しき歩廊(ほうむ)の上に立てば
ああはるかなる所よりして
かの海のごとく轟ろき 感情の軋(きし)りつつ来るを知れり。

大渡橋

ここに長き橋の架したるは
かのさびしき惣社の村より 直(ちょく)として前橋の町に通ずるならん。
われここを渡りて荒寥たる情緒の過ぐるを知れり
往くものは荷物を積み車に馬を曳きたり
あわただしき自転車かな
われこの長き橋を渡るときに
薄暮の飢ゑたる感情は苦しくせり。
ああ故郷にありてゆかず
塩のごとくにしみる憂患の痛みをつくせり
すでに孤独の中に老いんとす
いかなれば今日の烈しき痛恨の怒りを語らん
いまわがまづしき書物を破り
過ぎゆく利根川の水にいつさいのものを捨てんとす。
われは狼のごとく飢ゑたり
しきりに欄干(らんかん)にすがりて歯を噛めども
せんかたなしや 涙のごときもの溢れ出で
頬(ほ)につたひ流れてやまず
ああ我れはもと卑陋なり。
往(ゆ)くものは荷物を積みて馬を曳き
このすべて寒き日の 平野の空は暮れんとす。

広瀬川

広瀬川白く流れたり
時さればみな幻想は消えゆかん。
われの生涯(らいふ)を釣らんとして
過去の日川辺に糸をたれしが
ああかの幸福は遠きにすぎさり
ちひさき魚は眼(め)にもとまらず。

利根の松原

日曜日の昼
わが愉快なる諧謔(かいぎやく)は草にあふれたり。
芽はまだ萌えざれども
少年の情緒は赤く木の間を焚(や)き
友等みな異性のあたたかき腕をおもへるなり。
ああこの追憶の古き林にきて
ひとり蒼天の高きに眺め入らんとす
いづこぞ憂愁ににたるものきて
ひそかにわれの背中を触れゆく日かな。
いま風景は秋晩くすでに枯れたり
われは焼石を口にあてて
しきりにこの熱する 唾(つばき)のごときものをのまんとす。

公園の椅子

人気なき公園の椅子にもたれて
われの思ふことはけふもまた烈しきなり。
いかなれば故郷(こきやう) のひとのわれに辛(つら)く
かなしきすももの核(たね)を噛まむとするぞ。
遠き越後の山に雪の光りて
麦もまたひとの怒りにふるへをののくか。
われを嘲けりわらふ声は野山にみち
苦しみの叫びは心臓を破裂せり。
かくばかり
つれなきものへの執着をされ。
ああ生れたる故郷の土(つち)を蹈み去れよ。
われは指にするどく研(と)げるナイフをもち
葉桜のころ
さびしき椅子に「復讐」の文字を刻みたり。

監獄裏の林

監獄裏の林に入れば
囀鳥高きにしば鳴けり。
いかんぞ我れの思ふこと
ひとり叛きて歩める道を
寂しき友にも告げざらんや。
河原に冬の枯草もえ
重たき石を運ぶ囚人等
みな憎さげに我れをみて過ぎ行けり。
暗鬱なる思想かな
われの破れたる服を裂きすて
獣類(けもの)のごとくに悲しまむ。
ああ季節に遅く
上州の空の烈風に寒きは何ぞや
まばらに残る林の中に
看守の居て
剣柄の低く鳴るを聴けり。

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