第2回アーツ前橋あり方検討委員会 報告

審議会名

アーツ前橋あり方検討委員会

会議名

第2回アーツ前橋あり方検討委員会

日時

令和3年7月31日(土曜日) 午後2時~午後4時30分

場所

前橋市役所11階北会議室

出席者

委員

中島委員長、青野委員、大橋委員、小池委員、小山委員、島委員、中村委員、野本委員、萩原委員、渡辺委員、小坂委員、田中委員

事務局

関口副参事、徳野副館長、北澤主席学芸員、堺副主幹、狩野主任、杢三主任

次第

1 開 会 

2 あいさつ

3 議 事
(1)旧二中・収蔵庫等状況の追加説明

・旧二中PC室、収蔵庫の状況、借用保管手続き(資料1)

(2)再発防止に向けた課題意見交換
・紛失事案の経過と性質の分類(資料2)
・アーツ前橋の組織構造の課題(資料2)
・アーツ前橋学芸員の経験年数(資料2)

適正な作品管理(保管場所・管理体制)について
ガバナンスの強化(コンプライアンス、リスクマネジメント)について
美術館における組織運営(採用・配置・育成計画)について

4 その他
・次回の予定議題と開催日程

5 閉会

会議内容

1 開会

2 あいさつ
会議開催にあたり、委員長からあいさつを行った。

(中島委員長)
1回目を終えさまざまな方から意見を寄せられ、SNSでも見聞きする機会が増えている。今日は言葉を選ばずいろいろな事案を確認したい。

アーツ前橋で開催されている「新収蔵作品展」を見に行き、「前橋の宝」があることを嬉しく思った。予算により(展示)ボリュームがなかったのが気になった。

苦言を申し上げると「ロブソン」(ミュージアムカフェ)にいたところ、玄関から漏水をしているところに遭遇した。収蔵庫だったらと思うと暗澹たる気持ちになった。業者にも徹底した原因究明と対処を伝えて欲しい。

今日も長丁場だがよろしくお願いしたい。

3 議事

(1)旧二中・収蔵庫等状況の追加説明
○資料1「旧二中PC室、収蔵庫の状況、借用保管手続き等」に基づき、旧二中PC室の保管状況について、事務局から説明を行った。


(中島委員長)
画像に写っているものが紛失した作品なのか。
(事務局)
作品そのものである。

(小山委員)
写真に写っている黒い部分は何か。
(事務局)
黒い部分は(非公開部分のため)作家名を消したものである。
(小山委員)
(作品搬入時の)写真は撮ってあるのか。
(事務局)
搬入時の写真は担当学芸員が撮っていなかった。
(小山委員)
おかしいよ。これ。

(青野委員)
(資料に)図示されている3つの四角(の図)は作品なのか。
(事務局)
この3つの箱は作品ではない。
(青野委員)
(この列に並んでいたのは)5点だったか。
(事務局)
最終的に6作品あったのだろうと調査している。
額装されており、分別しないと搬出できないため、こうしたことから誤廃棄の可能性は低いとみている。

(小山委員)
作品を入れて(搬入してその時)写真を撮ってなかったのは学芸員か。
(事務局)
はい。

(萩原委員)
木版で額装されているのはガラスか。
(事務局)
アクリルで額は木だと思う。

(中島委員長)
作品1枚1枚の写真はないのか。
(事務局)
(作家名の)個人が特定されてしまうのでご遺族の意向で非公開としている。

(小山委員)
普通は収蔵庫に入れる前にカビとか確認するが、そういうことのためにここ(旧二中PC室)に置いたのか。

(事務局)
アーツに保管できる余裕、燻蒸する前に置いておく場所もあり、紛失事案後、その他の(旧二中に残された)作品は昨年7月に移送・燻蒸して、アーツ前橋の中に保管してある。

(小池委員)
PC室は空調により湿度管理もできるため、普段から作品を置くことにしていたのか。

(事務局)
空調が効かない部屋で普段から使っていたわけではない。

(小池委員)
初めて使った部屋ということか。
(事務局)
作品を置くところではなく、資料を置く部屋としていた。
(小池委員)
紙の作品だがこの部屋に躊躇いなく入れたというか。
(事務局)
作品に悪い影響があることは学芸員でなくてもわかる状況。(今年の)初夏に入ったがかなり暑かった。
(小池委員)
学芸員の判断とは思いづらい場所の選定だと思う。
(事務局)
個人のエラーやチェック機能も働いてなかった。

(中島委員長)
他の作家作品もここにあったということか。
(事務局)
大きい号の絵画があった。
(中島委員長)
それも同時にここに運び込んだということか。
(事務局)
同時である。

(萩原委員)
(画像の部屋には)窓があるが、搬入時に撮った写真か。
(事務局)
搬入前に撮ったもの。窓は4か所ありカーテンは締まっている状態。作品を置く前提で撮った写真でなく、どの部屋を使うか検討するために撮った写真。(PC室は教育委員会から)借りていなかった部屋。借りていない部屋に作品が置かれたため、アーツの中で十分に共有されていなかった。

(青野委員)
(資料中の)「テーブル」と「段ボール」は、作品を置くための押さえとして寄せたということか。
(事務局)
その通りである。
(青野委員)
段ボールは作品が無くなった後、残っていたのか。その段ボールは廃棄の対象だったのか.(事務局)
廃棄の対象だった。
(青野委員)
廃棄対象の段ボールの後ろが、廃棄してはいけない作品ということか。
(事務局)
作品と段ボールの間の区分けを行った後、(線引きした外の不用品の)廃棄が行われた。
(青野委員)
廃棄の時点では、最後の調査時点と配置が変っていたということか。
(事務局)
線引き時に撮った写真があるが、立てかけている作品と前に置いてある段ボールの位置が、区分けを行ったので微妙にずれている。

(小山委員)
1月6日(最初の時点)に3点が無くなったのは、誰が気づいたのか。
(事務局)
担当学芸員である。
(小山委員)
その学芸員は3点がない状況の写真を撮っているのか。
(事務局)
撮っていない。
(小山委員)
今はスマホがあり楽に撮れる。そういった意味でも撮ってないのは信じられない。これはあり得ないと思う。
(事務局)
そうしたことができなかったことが共通認識で良いと思う。

○「保管手続き・収蔵庫の状況」について引き続き事務局から説明を行った。

(大橋委員)
総合教育プラザにも作品や資料があると聞いたが、こちらはどうなのか。
(事務局)
総合教育プラザにも鍵がかかり空調がある収蔵庫があり、そこに収蔵してある作品もある。経過とすると(アーツ前橋開館前から)市が持っていた作品で、アーツ開館後に収集した作品は全て収蔵庫に入れている。

(中島委員長)
総合教育プラザに置いてある作品は、アーツの収蔵作品と見なしていないという理解か。
(事務局)
アーツ前橋の収蔵として開館時に整理し、以降、収蔵委員会で収蔵したものを上乗せしている。

(島委員)
アーツ前橋の収蔵状況は他館と比べて遜色はないと考えている。
そのほか寄託で保存しているものはあるか。
(事務局)
特に大型の作品は5点以内だと思う。
(島委員)
数が多い場合に取る方法として、木箱だとかさばるため、が見えるスケルトン・簡易な梱包に仕立て直し、少しずつスペースを増やしていた。
もう一つの課題である寄託と寄贈の受け入れは僕の美術館でも悩みであり、事務局説明のとおり必要なものを吟味することが重要だと思う。
寄託の話は断りづらいものだが、その作品がその美術館にとってどの程度の重要度か判断し、吟味して整理して欲しいと思う。

(小池委員)
前回(収蔵した作品を)一部手放すことも考えたらどうかと提案させていただいたが、収蔵するにあたり寄託・寄贈の審査を厳しくすることに賛成である。民間企業の例だと何かの意思決定をするとき、必ず社外取締役の意見を聴くのがルールになっている。地域の人からの意見も良いが、外部役員のような方がいるのも大切だと思う。
(事務局)
収蔵委員会の委員は全員外部の方となっており、県内作家に詳しい委員や全国的に活動している方もいる。収蔵委員会の判断は全て外部の方に委ねている。

(2)再発防止に向けた意見交換
1.適正な作品管理(保管場所・管理体制)について
2.ガバナンスの強化について
ア)コンプライアンスについて
イ)リスクマネジメントについて
ウ)美術館における組織運営(採用・配置・育成計画)について

(事務局からの資料説明の前に、予定議題以外についての質問)

(中村委員)
「今後のあり方」についてきちんと検討しないといけなくて、この時点でないと言えず、今日の議題に入れて欲しいことを申し上げたい。

前回と今回、会議に参加してモヤモヤしていることが多く、「情報量の違い」がありすぎて何かを判断するのにいろいろ難しい。

前回配っていただいた調査報告書も抜粋であり、でも(全資料は)分量もあって大変で、その中で、中島委員長は(作品紛失)調査委員にも入っており、アーツ前橋が開館時からいろいろな活動を一緒にやってきたので、委員長という立場で自分の意見を言うこともあれかなというのがあって、中島さんも「僕はこう思う」ことを言っておいた方が有益であればお願いできないかというのが提案である。

(中島委員長)
中村委員から質問があったが、次の議事の(2)「再発防止に向けた課題意見交換」という中で良いか。

(事務局)
予定している今回の議題は、主に(紛失)調査委員会の報告書の提言として大きな柱の「適正な作品管理」と「ガバナンスの強化」、(細項目として)「コンプライアンス」「リスクマネジメント」「美術館の運営」、この委員会の大きな目標は、今後こうした問題を起こさないようにする「再発防止」だと思っている。再発防止をしながら今までのアーツ前橋の魅力や良いところを引き継ぐ。

(中島委員長)
「中村委員の質問に答えていいか」という意味で質問したのだけれども、答えたいと思う。
(2)の「再発防止に向けた課題意見交換」に繋がるということ、総体的な流れを自分が多くの方たちの意見と情報を知りえる立場にいて、それが共有されていないのはおかしいと一部指摘を受けているところである。

極めて単純なところというのが僕の結論。

委員長という立場で委員会を進行してかなくてはならない使命があり、なかなか表現できないところであるがが、再発防止に向けた課題ということで、少し掻い摘んで話をさせていただくことで、見えてくるもの、共有できるものがあると思う。僕が感じた一連の流れの中で違和感、疑問について聞いていただければと思う。

先程も作品の借受けという項目で説明があった。担当学芸員が運送業者の専門業者を伴って一人で行っている。「なぜ一人なのか」という疑問を持った。

また、コンディションに問題がある作品を旧二中に移動したという説明があったが、なぜという疑問が残る。誰がそのコンディションを分類し、旧二中へ移動しようという判断をしたのかという疑問。

ここが一番疑問なところだが、旧二中へ15作品を入れ、次にその作品を担当学芸員含め職員が次に目にするのが8か月後。8か月間の長きにわたり一切、手が付けられなかった状況がなぜだったのかという疑問。

次に、旧二中へ行って調査に行ったら3点が無かった。ところが再度調査に行くのが20日後で、さらに3点無いことに気が付いた。初めになぜ6点が無いことに気が付かなかったのか。ここに大きな疑問がある。

さらに、その移動車中の会話の録音されている、これは何だったのか。

次に、人格的に好意が持てる行政マンとして能力がある前館長が、当時の課長に報告しないはずはない。(発覚から)20日後に担当学芸員は館長に報告し、館長も副館長に報告をした。それが1月末だった

(前)副館長がその段階で(前)課長に報告してないはずはない。調査報告書、あるいはヒアリングによれば、(前)課長は年度内に庁内での共有を一切していない。

さらに驚くことにその課長と担当学芸員は一斉に転出している。新年度、新課長と副館長が就任し副市長に報告をしている。副市長(報告)後、に市長に(報告が)あがった。これが僕の疑問、違和感。

「作品に対する保管の意識」も問題があると思うが、(前)課長を通じて(紛失発覚直後の年度内に)庁内に紛失案件が共有されていれば、人事異動は無かったかもしれない。

憶測で物を言うとバッシングされるかもしれないが、ここに座っている課長は当時の課長であったかもしれない。人事異動で「全く寝耳に水」という立場で職に就いた管理職が事後処理的に問題を扱うことになった。ここが「前橋市は一体何をやっているのだ」と強く思ったところである。

細かいところではさらにあるが、調査委員会の中でこの部分は再三にわたり指摘させてもらったところ。それがリリースされている報告書に記述が無いため話をさせていただいた。

一連の違和感と、疑問点を通じて再発防止に向けた意見交換に入っていきたい。それを踏まえてこれからの進行を聞いていただきたい。


○資料2 「紛失事案の経過と性質の分類、アーツ前橋の組織構造の課題、学芸員の経験年数」に基づき事務局から説明

(中島委員長)
年度内に紛失案件は部長まで(報告が)上がっていたのか。
(事務局)
2月中には上がっている。その後、課長以下で前館長との話し合いが続いていた状況。

(中島委員長)
部長まで上がった案件が庁内で共有されないことはあるのか。

(小坂委員)
市長まで報告するかどうかは、報告すべき案件(内容による)が、(市役所の処理上の)「事故報告」として最低でも副市長まで早く指示を仰ぐ案件だったと思う。前館長の考え方が違っても部長の立場できちんと業務すべきで、前橋市役所でもそういうルールになっている。私も4月に初めて知った。

(中島委員長)
部長級が知っていて庁内に共有してことはあり得ないだろう。
(小坂委員)
これはあり得ない。
(中島委員長)
その上で人事異動が行われているのは疑わざるを得ないし腑に落ちない。(現)課長も(現)副館長も寝耳に水で(引き継いで)問題に対応せざるを得なかった。その中で館長との軋轢、報告する、しないの話に発展していく。当事者ではない管理職がこの件を扱わなくちゃならない。この委員会でも当事者は誰も座っていない。これは前橋市役所全体の欠陥であり、構造的な納得のできない状況と思う。
(小坂委員)
職員課長も全然知らなかったと事後的に聞いている。

(中島委員長)
先程、中村委員の質問を受け、僕の違和感、疑問について話をし、年度内に問題が庁内に共有され、人事異動が行われず初動の問題がクリアな状態で共有されていれば、ここまでの大きな問題にならなかったと思う。

「組織の構造上の課題」として、専門職と行政職の信頼関係の構築がされていないという指摘があったが、自分も数年前から感じていた。

ただし、年度内に事実が共有されなかった問題は分けて考えるべきだと思っている。部長級まで上がった事案が庁内に共有されてないのは、アーツ前橋の問題よりも、前橋市全体の問題と認識した方が良いと思う。

(野本委員)
紛失の件は「お互い杜撰だった」の一言に尽きると思う。今後注意したり、マニュアルを作ったり、他館から学んだり、学芸員も含め事務方も勉強するなり真剣にやって欲しい。

所蔵者・作家の遺族の方への報告の遅れは、委員長のとおり、もともと前橋市の行政の問題はあると思う。資料にあった「アーツ前橋の組織構造の課題」は、今後「あり方検討委員会」で議論しなくてはならない柱だと思うが、それとともに、本来の議論に話を進めて欲しい。

資料を見て「やっぱり」と思ったのは、事務職の文化国際課長から下りてきていて、副館長がきて館長が後ろに書いてある。意図的なのか無意識的なのか、公立美術館での事務職と館長とのあり方をご意見いただければ、もう少し先に進むのかなという提案である。

(島委員)
美術館の館長としての話の前に誤解を一つ。委員長から、借用に際し一人で学芸員が行くことへの疑念があったが、基本的には全国の美術館、担当者は必ずほぼ一人、調査に行くのも基本的には一人である。費用面でも出張に二人行くと二倍がかかるので、基本的に学芸員は一人で輸送業者と一緒にトラックに乗り作品を集める。誤解を解いておきたい。
(中島委員長)
50数点という数字に惑わされた。申し訳ない。

(島委員)
館長の「ガバナンス」だが、誤解されると困るが、「館長はどこかちょっと頼りないくらいがちょうどいい」と思っていて、そのくらいの方が、学芸員が奮起し、生き生きと活動ができる。これは、僕の個人的な持論である。

行政とのやり取りは、「お互いに美術館を良くする」という方向性を共有することだと思う。

組織図もいろいろなものがある。組織によって年齢構成もいろいろ。

アーツ前橋に学芸課長に相当する方がいて、館長の意向を受けつつ、学芸員とのやり取りをする。そういう形があれば、もう少し円滑に、風通しの良い職場環境になった可能性もある一方で学芸課長が頑な方の場合、館長との意思疎通ができなくなってしまう場合もある。美術館の風土もあるし、土地が持っている空気感もある。

一般論的に言えないところがあるのと、自分みたいな性格の人間が館長になるのと、前館長のような方がなる場合でも違う。

それぞれの資質が違い、学芸課長にあたる方が、うまく館長と学芸員の間を操縦しながら若い学芸員たちを守る、事務方と一緒に美術館を作っていこう機運が醸成されることが大事と思う。

館長であれ、学芸課長であれ、上に立つ人が話しやすい環境を作ることだと思う。


(青野委員)
30数年にわたり美術館の学芸員をやってきた。私立美術館に所属しており、公立美術館の構造は傍から見ているだけで、それぞれの美術館、千差万別、一概に言えないと思っている。

事務方と学芸って両輪である。スター館長だけでは美術館は絶対に回らない。そして人は大なり小なり必ず失敗する。その時に美術館みんなでカバーし挽回して、次に失敗しないよう持っていくかが、管理職、上司の仕事と思って何とかやっている。

学芸だけでは絶対に回らないので、いかに総務・事務の人とお互い風通しを良くして、持ちつ持たれつという認識を持ち、いい組織、いい美術館にしていくかという一つの目的のため、別の方向から動いていることを認識し、お互い盛り立てていくのが美術館のあり方なのではないかと思う。

(萩原委員)
私も、前館長と同じ立場で、いろいろな問題があるが、ひとつは人事(権)が館長職に無いことだと思う。(人事異動で職員の)誰が来るのかわからない。学芸員を雇う時に試験は立ち会う。そこでは決定権はある。前館長は「学芸員は任期制で4年ごととかに試験を受ける」と言っていた。「それはない」といつも思っていた。学芸員はそこで育ち、責任を持ってその美術館でやってもらいたいと思う。

館長に人事権はなく、企画だけ責任を持てばいいのか。館の管理の有事の際、報告が来るシステムもない。連絡は職員有志のLINEグループで届く。事故や管理という問題が起きたとき館長として責任を取れるのか。もちろん取るつもりだが、そこまでの管理システムになっていない。しかし実際には、人事権が無くては怒れない。「職域と職責を明快にしてください」と言っている。

(田中委員)
議論していないことがあるが、渡辺委員が用意していただいている資料でリスクマネジメントについて話を聞き、議論できなかった部分は、次回、しっかりやるというのでどうか。委員任期は10月末までとなっているため、月1回ペースでやると全部で5回会議が取れる。次第に書いてあることは大事なことなので、十分議論尽くさなくてはならないと思う。

(中島委員長)
(予定の9月末から)伸ばして良いということ。館長人事も委員の意見を聞きながら、決めさせていただきたいと思っている。

(事務局)
あり方検討委員会の大きなテーマはが3つ。ひとつ目は「再発を防止する体制を作る」、2つ目は「それを揺るがさない中でアーツ前橋の魅力を生かしていく」、3つ目は「それをやっていくような今後のアーツ前橋にふさわしい館長の人物像」と思っている。今回積み残しているので、渡辺委員のご意見をいただき、次回もしっかりこの議論を続けさせていただきたい。

(小山委員)
館長の人物像と言われたが、「いい人」とか「怒らない人」とかなのか。
(事務局)
そういうことではない。

(小山委員)
館長も人によって違い、すごい人が館長に来ることもある。そのような時、どのように組織が対応できるのかも考える必要がある。「人物像」という抽象的なことだとまずいと思う。

(中島委員長)
市長と打合せして、特別職の館長人事は、市長の専決事項であり「この委員会で決定をしてくれ」と承認を得ている。今から8年前に前館長を決める時も、当時の政策部長やその他の部長級の方たちと何人か候補をあげ、他館を定年している方が大勢名簿にあったが、当時の運営検討委員会ではやめようよという申し合わせ、私は前館長の名前を出して強力に推薦した経緯がある。それで市長から承認を得た。それで今回も、この公開の場で、固有名詞を出し「この方はどうだ」という選任の仕方は失礼すぎるから、クローズな状況、僕は腹案を持っているが、火中の栗を拾ってくれる方がいるのか疑問もあるが、そういう決め方をしていきたいと思う。そういう決め方をしてくれと市長からも承認を得ている。

(事務局)
(渡辺委員から)資料を説明していただき、次回積み残しの部分があるのと、館長の決め方は、事務局が市長から聞いている部分も改め市長に確認して次回に臨みたい。

(渡辺委員)(資料説明)
「アーツ前橋の機構・組織構造の課題」の資料をみると、世の中このような組織は良くある。民間企業で例えると「館長」は取締役が付いていない「執行役社長」、副館長は株主から送られた「取締役副社長」兼「管理本部長」、文化国際課長が、株主の会社の「事業部長」や「事業本部長」。館長には執行の部分で100%力を発揮してもらう。管理その他は、株主から派遣されている管理本部長の副社長がやるという構造の会社はあるがうまくいかない。

職員の人数や専門的な知見を持った人材不足、年齢構成、社歴のばらつきといった組織はたくさんある。

そういう組織を「杜撰な仕事」をするためにどうしたらよいか。人も組織も間違える。そこで、火事の事案の例で話をしたい。

2013年、足腰が立たない重篤な年寄りが入院している整形外科、院長の親の代から数十年も続けてきた福岡の病院で火災が発生し、10人の入院患者10人が死亡し、医療者と患者5人が負傷した事案が起こった。当時すでにスマートフォンが行き渡っており、火事の映像がネット上に拡散し大変な話題となった。

全国版の新聞記事でも大きく掲載された。院長の両親も入院していたが一緒に亡くなった。院長・父親ともに地域の評判の高い名医だった。自分は15年以上謝罪の場面を見てきたが、未だこのようなすごい謝罪の写真を見たことがない。火災現場で着の身着のまま、詰めかけた記者の前で、釈明している姿が記事になっているが、嗚咽が止まらない状態である。

心に無い謝罪している会社の話は、メディアに追いかけられて出なくても良い話も出て串刺しのようになるが、この事故に関しては、大きな報道はなくなる。なぜか。魂から謝っている人にこれ以上責めることはできない。命を掛けて患者を預かっていたならば、こういう謝罪になる。

「悪かったのであれば、人として詫びる」「きちんと詫びる」こと。だが、立場や背景、言い訳、組織・社内の論理、いろいろなものがあり、なかなかできない。この記事を読んでみると、この院長は両親の代からも含め、心の底からこの病院を運営してきたことを理解できた。預かっていた命を亡くしたことについて「この後の人生をかけて償う」とコメントが載っている。

この事故は、警察の捜査を受け書類送検されるが、最終的に不起訴になった。原因は、医療機器が取っている電気のソケットの上にたまったホコリに、古い医療機器の熱が移って発火の原因になったと考えられたが、過失だが罪は問えない。不起訴までの4年間、遺族に対して償ったプロセスが、病院に対し、患者の家族たちも共感をしたのか、一定の和解は民事で結ばれていたと思うが、刑事責任を問わないとなった。

院長は、「この後の人生をかけて償う」「事故について深く心に刻み、二度と起こさないようにしながら、自分ができる医療行為を自分のできる範囲で最大限人生をかけてやる」といい、一旦この病院は閉めて別の小さな整形外

科をやっているが「日本一の先生」とコメントが書き込まれている。そういう気持ちで仕事ができれば、不祥事にはならない、不祥事は起こらない。

次に不祥事・リスクを背負ったとき、どんなプロセスで対応すべきかセオリーと言われている手順で、知人が書いた本にあるのが出典だが、「しゃ・ちょう・げん・かい・で・しょ」、謝罪(しゃ・ざい)、調査(ちょう・さ)、原因究明(げん・いん・きゅうめい)、改善策の策定(かい・ぜんさくのさくてい)、処分(しょ・ぶん)。著者に了解を得て、もうひとつ「長」をつけ「ちょう・しゃ・ちょう・げん・かい・で・しょ」と私は説明している。

最初に「調査」。限られた時間の中で尽くせる限り現状調査を行い情報を一元化する。

次に「謝罪」。ここまで何日使うか企業であれば3日。1週間も置いたらそのこと自体が串刺しになる。(処理の担当は)徹夜でやるが、悪いことをしたのだから当たり前で人の命を失ったら大変である。

その後、「しっかり調査する」が許されるのは3か月。4か月に1回決算発表があるので、片付いていなければ決算どころではなくなり「あの案件どうなったのだ」とまた串刺しになる。

その調査で「原因」を突き詰め、「原因究明」のために問題、利益相反があれば第三者を使う、調査と原因究明は一緒に行う。これができないと改善策が策定できない。改善策の策定をきちんと行いトップまでしっかり認識する。

最後にトップも含め、遡って懲戒免職、減給、けん責など、「処分」を行うという順番である。

この順番を逆にしたり飛ばしたりするとモヤモヤする。質問を受けて、しどろもどろになるということが繰り返される。

アーツ前橋のこの件のプロセスは順番が頓珍漢になっている。改善策の策定のプロセスに来ていると思うが、遡って調査と原因究明を我々はやっていることが分かると思う。でも処分もやってしまっている。なぜか。「何カ月も共有しなかった」と説明があったが時間がかかり過ぎた。民間企業なら「謝罪まで3日」である。

人や組織が間違えたりすることはよくあると申し上げたが、杜撰なことが起こらないようにするため「みんながやること」がある。上に立つ人が、その仕事と組織に対し「自分でその仕事と組織を愛する」という気持ちと、自分のチームや部下の人たちを愛すること。上に行けば行くほど時間はないが、限られた時間の中で「気に掛ける」「愛情をふりまける」こと。その熱量や分量が多いほど、その組織はうっかりせずに済む。乾いた関係、愛が無い組織は大抵どこかで間違える。最悪なのは内部告発でメディアに言われ大変なことになること。

アーツ前橋も前橋市も「組織は人が作っている」ので、人ができることで抑えないと組織やマニュアルを作り規則で縛っても抜けてしまう。最後は「おせっかいだけどさ」と言いながら牽制してあげる、仕事への「誇り」が牽制に繋がる、お客さんの帰り際の「今日良かったです」という言葉が牽制になることもある。「あり方」を考えていくとき、嫌な話と同時に人間的な部分を盛り込めたら良いと思う。

(中島委員長)
良くわかる話だと思う。
(委員会会議は)あと3回という理解で良いか。
(田中委員)
委員の皆さんが良ければ。
(中島委員長)
あと3回(会議を)実施する理解でお願いする。

いろいろ僕の勝手な推論を含めた話をしたが、前館長の人格をも含めて否定されているような状況はこの委員会ではないと考えている。
前館長の功績、アーツ前橋を全国区、世界に発信してくれたと確信していると思っている。確証がないので、専門家の方に、外から見たアーツ前橋がどうだったのか最後に聞いておきたい。

(小山委員)
その前に、紛失事案の資料を読んで思ったが、「無くなった6点をどう捜索したか」が書かれていない。当事者や学芸員、運送屋など調査しなくてはならない情報が一切ないのはおかしいと思う。それでは調査する方向が違うし、無くなった作品がどうなっているのかは遺族の方も気にすると思う。大事なものであれば(資料から)抜けているのはすごく嫌である。

アーツ前橋は、お金が無い美術館である。すごくいいのは、大きな美術館を作るのでなく、昔の西武デパートを切り替えながら、自分たちの予算にあった美術館を作っていった。開館前から地域の人たちと一緒にやることが初めからあった。館の屋上の「空のプロジェクト」なども面白い。

若いアーティストの二人展をやったり、「コレクション」は、地域にとって大事な記録で、それを持つのは、その地域でしかできないし、収蔵したものが世界的に繋がる可能性もあるかもしれない。そうしたスタジオを作るためにもコレクションする必要がある。かつ「コレクション」により予算の無い美術館の中で「コレクションプラス若い人」というやり方を前館長はやってきたが、それも地域の中での縦の会話ができるということを考えていたのが面白いと思う。

小泉明朗は世界的に評価されているが、小泉明朗ややなぎみわの個展を行ったのは良いことだった。「食」や「ファッション」「建築」とか、いろいろなものを持ち込んでいるのも面白い。

水戸(芸術館)ができたとき、どの地域でも日本の美術の中心になれると思った。前橋もそんな意識を持ってやったらいいと思う。そういうことを前館長は意識していたと思う。

レジデンスで海外の人を呼んでいたのも、地域の人にはいい刺激になったと思う。いろいろなレイヤーがこの8年間にあり相当濃いと思う。

(青野委員)
前館長が中心となりアーツ前橋をやってきた実績は自分も全く同意するところ。前橋の市街地活性化にも着目し、ヤーギンズやいろいろなアーティストと一緒に、世代の近い館長として親しく接し、腹を割って話し合いながら、お互いに発展させていけていたのは素晴らしいところだと思う。

発信力のある地方の美術館として実績は積んできた、確実に評価ができる。
それを今後も発展させていかなければならない。

(萩原委員)
個人的な感想では、前館長は、水戸芸術館や金沢21世紀美術館など、もっと先端的・前衛的な現代美術をやりたかったのではないかと思う。
やはり、彼が横浜で起こした事件を引きづっているのだと思う。だからこそ地域を大事にする考えに変わったのだと思う。
もしあのような辞め方を前職でしなければ先端的な芸術に行った人だという印象がある。
二人でいつも話していたのは、地域の人たちとどう共生し、地域を盛り上げていこうか、地域活性化のこと同時に話していた。

(中島委員長)
これは重要な話で、「今後のアーツ前橋の位置づけをどうするのか」の議論を次回していきたいと思っているが事務局と調整する。

何度も話をするが、アーツ前橋をどうするかの方向を考えるとき、全国に多くの美術館がある中で、アーツ前橋が担うべき役割を明確に共有していきたいと考えている。今まで7年かけて現代アートを構築してきた実績をブラッシュアップし、さらに伸ばし、それを前橋市・前橋市民が支えていくということを共有、理解できればいいかなと考えている。

(大橋委員)
中島委員長に質問だが、会の目的は、「再発防止に向けた意見交換」をやった上、「今後アーツ前橋が二度とこういうことが無いよう」いろいろな角度から検証すること、「杜撰なことをどう防ぐか」もあるが、学芸員の待遇とか、隠れたいろいろなことがあると思う。
今日は核心的な部分に入れなかったことが残念だが、それをメインにやっていくのか、それとも今の委員長の話だった「今後アーツ前橋はどんな美術館としてやっていくのか」どのような進め方をするのか伺いたい。

(中島委員長)
指摘のとおり構造上の問題という議論がり、人事や組織編成や展示企画の問題とかまで言及していくのだと思う。その辺も扱っていきたいと考えている。資料にある組織構成図を元に議論を深めてもらえれば、懸案の学芸員の待遇、その他に改善がみられると思う。

それも重要なことだが、それ以上に「今後のアーツをどうするのか」。
ベースには学芸員の待遇も含まれると考えている。そういう理解でよいか。

(小坂委員)
職により議会の同意が必要だが特別職は市長の意向等で選べるが、公立美術館なので学芸員の一般職には選考がある。特別職やいろいろな方が横やりをいれて決めると地方自治法の違反の部分もある。館長の意向にある程度沿いながら、人事の部分は館長とそれ以外の一般職の学芸員を分けて違って考える部分はご理解いただき、今後の組織、待遇のご意見をいただきたい。

(中島委員長)
膠着している状況は劇的に変えられないということか。
(小坂委員)
正規職員の任期付を取り払うのは考え方としてあり得るが、採用の選考はという部分。市長から「館長はある程度腹案を出していただいてありがたい」という部分は(法律上)問題ないと思うが、それ以外の一般職は腹案といかない。公立、設置者の関係があるので考えさせていただきたい。
正規職員の登用は前館長からもいただいている。いろいろと細かいことを話せば長くなる。将来的には考えていくつもりである。

(青野委員)
私も他の方もアーツ前橋の功績の話をさせていただいたが、それは、前館長一人がやったことではなく、多くの学芸員が、時間を忘れ、仕事に情熱を傾けて、館長を支えてやってきた成果ということを忘れないようにしたいと思う。その人たちの待遇はもっと改善されると良いと思う。

4 その他
・次回の予定議題と開催日程

今回議論を深めることができなかった「作品管理」「ガバナンス強化」を中心に「今後のアーツ前橋」などについて意見交換予定。意見の活発化、時間短縮のため、次回会議に向けて、メール等で事前に意見聴取し資料を作成する。

次回8月28日(土曜日)で調整する。

5 閉会

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更新日:2021年08月27日