アーツカウンシル前橋動画紹介「第6回・第7回文化芸術市民会議」【文化国際課】

第7回文化芸術市民会議

第七回文化芸術市民会議

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アーツカウンシル前橋 第7回文化芸術市民会議

日時:2021年9月25日(土曜日)14時開始

会場:前橋市庁舎6階web会議室

講師: 鬼木 和浩(おにき・かずひろ)氏

横浜市文化観光局文化振興課長(主任調査員)

プロフィール

1988年横浜市に入庁し港北区の文化振興を担当。その後、福祉、税務などの部署を経験した後、2004年4月から文化芸術都市創造事業本部文化政策課に配属。「横浜市芸術文化教育プラットフォーム」設立、指定管理者選定、文化施設整備等を担当。2009年4月から横浜市役所初の文化芸術の専門職員に就任。2021年4月から現職。日本文化政策学会監事。

共著に「文化政策の現在第1巻 文化政策の思想」(東京大学出版会)。

テーマ:「3つのキーワードで読み解く横浜市の文化政策」

 

 

対談

(友岡統括責任者)

様々な団体に力を借りるとなると、いろいろなタイプの参加者がいる。いくら対等とはいえ、不測の事態に対しての責任の取り方などはどうしているのか。

(鬼木氏)

あらかじめ想定して責任の範囲を決め、書類を交わしている。

(友岡統括責任者)

普通、指定管理者制度は施設の管理を公募することにより“競争原理”を働かせ運営を健全化させる狙いがある。横浜市はそれをあえてやらずに、財団を10年間といった長期間優先指定する仕組みを作った。それは行政の中で、どういった議論の過程でこのアイディアが出来上がったのか。

(鬼木氏)

初めは公募だったが、組織の中で反省が共有されるようになった。“競争”となる目先の提案より、長い時間にかけての提案に着目すべき。必ずしも提案を競う事が最適ではない。

(友岡統括責任者)

“ネットワーク型ガバナンス”で、今後の自治体職員は適切な担い手を選ぶことが重要だといった話だったが、鬼木さんは担い手の「目利き」になることを意識して芸術のキーパーソンを探しているのか。

(鬼木氏)

意識しているわけではないが、できるだけ色々な方に会い、視野を広げるようにしている。

(友岡統括責任者)

「クリエイティブクラス」の人はONとOFFが曖昧というが、鬼木さんの立場もそうなのか。一般的な自治体職員の姿とは違う。ご自身ではどう受け止めているのか。

(鬼木氏)

文化芸術には興味があった。この役職に就いていなくとも、そういった場に足を運んだだろう。

(友岡統括責任者)

一つの部署に恒常的に在籍し続けるのは自治体職員の在り方として稀だ。横浜市の今後の文化行政のためには、鬼木さんのような人材の後継者育成が必要だと思うがどうしているのか。

(鬼木氏)

継続して関わることが必要。つなげて行きたい。

(友岡統括責任者)

横浜市といえば、港に近い地区を想像してしまうがそれ以外の地域もある。地域間格差による課題は感じるか。

(鬼木氏)

はっきりした裏付けはないが、感じる。今後、慎重に各地域を見て行く必要がある。

(友岡統括責任者)

横浜市の具体的な取り組みの中で、多層的にユニークな仕掛けがあったが、専門家や現場に任せるという話を踏まえると、事業の企画立案は団体からの提案か。

(鬼木氏)

それぞれ事業ごとに異なる。

(友岡統括責任者)

営利と非営利の判断はどう働くのか。

(鬼木氏)

行政が出したお金がどこに使われているのかしっかりチェックしている。地域に還元される部分に支援している。

 

意見交換

(A)

横浜市では、鬼木さんと同じような立場の方はいるのか。また、鬼木さんは全く一人で動かれているのか。それとも何人か事務の方がいるような組織があるのか。

(鬼木氏)

“主任調査員”は“行政専門職員”となっていて、私一人しかいない。私は主任調査員ではあるが、一般的な行政組織の課長職として通常の文化行政の仕事をしている。特別、独立した機関としてやっているということではない。

(A)

“通常の課長”と“主任調査員”はどういった関係性なのか。

(鬼木氏)

通常、課長職であれば3年くらいすると変わってしまうが、私はずっと同じ文化振興課におり、文化の仕事に継続して関わっている。課の仕事もそうだが、市の方針に関わる部分にも課を超えて手伝う事もある。

(友岡統括責任者)

横浜市は以前から注目される自治体であり、日本の中で「創造都市」という言葉をキーワードにして都市再生戦略を進めた先駆的な事例だ。第二次産業が衰退する中、クリエイティブな文化の力を中心とした新しいアイディアを創出することを都市のエネルギーにして創りかえる。そういった取り組みを横浜は早々に取組んだが、鬼木さんはそういった流れに関わったのか。

(鬼木氏)

創造都市を直接所管することはなかった。ただ、「文化芸術創造都市」として文化芸術を中心とした創造性を街の活性化に関与していくというところで言うと、文化振興課の文化政策も大きな枠組みでイコールであるので、そこでは関わっている。

(友岡統括責任者)

そういった政策を進めたことは、横浜に先見の明があったところだ。そういったことをやる背景には、隣に東京があるという事が重要なポイントなのか。

(鬼木氏)

横浜の文化シーンはどうしても東京の影響下にあるので、どうやって横浜を選んでもらうかが課題。そういった中で、「文化芸術創造都市」が大きな戦略として打ち出された。

(友岡統括責任者)

横浜は資源も人も多く、何でもあると感じるが、隣により大きな都市があると、そこで独自の生き残り戦略を考えなくてはならないという所が、都市づくりにはある。素晴らしいのは、横浜の街を起点として新しい芸術表現が作られるだけでなく、新しい芸術文化を担う人材も育まれている。そういう取り組みの拠点をご紹介していただきたい。

(鬼木氏)

クラシック横浜などは、若手の演奏家育成に取り組んでいるし、最近だと横浜にある東京芸術大学大学院の卒業生が映画祭で連続して受賞するなど嬉しいことだ。

(友岡統括責任者)

次の世代を担える人材を育てる事が、街としてできていることは素晴らしい事。前橋も負けていられない。都市の規模の違いはあるが、仕掛けとしてのプラットフォームがあれば人を育てるきっかけはできる。鬼木さんの話を参考にしながら、そういった所にも文化行政の力が及べばいいと思うし、アーツカウンシル前橋もそういった所への提言や努力ができればよいと考えている。

(B)

広く文化芸術を届けようとすると、“薄まる・希釈される”ことが多いが、横浜はそう感じない。それは、地方のことは地方に、専門のことは専門家にと、地方や専門家との信頼関係があるからなのか。

(鬼木氏)

横浜は大きな街であるが、催し物一つ一つの意味合いがはっきりしていて、一定の人が継続して注目をしている。これが色々なジャンルにあり、コミュニティーになりかけている集団もたくさんある。そういった人達を大事にして情報がリーチするようにしている。

(B)

束になって届くというより、長く遠くまで届くという印象がある。

(鬼木氏)

横浜の街のイメージにうまく結びついているのではないか。

(友岡統括責任者)

横浜では、人口が多いためニッチな所に需要が狙えるが、人口密度が低い地方都市では、そういったコアなものをどう展開させるかが課題。しかし、文化芸術振興のためには、そういった所を捨ててはならない。常に地方都市はそういったことについて戦わなくてはならない。

(鬼木氏)

例えば、横浜アートサイトなどは小さいプロジェクトだと5人くらいの参加者を支援した。規模は関係なく支援できるような制度にしている。地域で必要とされる事業をきめ細かく支援している。

第6回文化芸術市民会議

ACM第6回文化芸術市民会議

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第6回アーツカウンシル前橋 文化芸術市民会議

リモート開催 Microsoft Teams

日時:令和3年2月20日(土曜日)午後2時~3時30分

会場:前橋シネマハウス

 

 「前橋に再び映画文化を根づかせるために」

 

 

対談

 

友岡統括責任者×前橋シネマハウス支配人・日沼大樹

(友岡統括責任者)

日沼さんが前橋シネマハウス支配人になった経緯・運営のコンセプトはどんなものか。

(日沼支配人)

・前橋映画サークル会長をしていた祖父が「群馬映画社」を設立。家業とも言える映画に携わる仕事を終わりにしたくなかった。

・新しい映画の方向性や伝え方を考えて行こうと思い、映画業界へ戻った。そんな時、前橋市より「前橋まちなかのにぎわい創出のために運営して欲しい」と依頼を受けた。

・心を動かされる映画に出会い、自分が「伝えたい」と思うことを映画が代弁する力に気づいた。映画館を運営して行けたら、もっといろいろな人に届くのではと思い支配人を引き受けた。

・宣伝が大きくなくても人に伝えたくなるような映画がたくさんある。そんな映画を上映するにも、前橋シネマハウスのようなミニシアターが必要とされている。

(友岡統括責任者)

・制作者と映画館の距離が近くなり、生身の人間に伝わる状況は芸術の成熟。コロナ禍により、作り手と観客、映画館が同じ場を作りにくくなり、共有できないのは残念。

・ネットフリックスなどで映像が溢れていることについてはどう思うか。

(日沼支配人)

・コロナ禍では感染リスク回避からネット配信先行になってしまう。これには危機を感じる。

・今まで映画館に来ていない方に来て欲しいと思っている。そのような方がネットフリックスなどに慣れてしまわないか危惧している。

・海外と比べ、日本の映画館では1本映画を観る単価が高い。それも影響している。

(友岡統括責任者)

・映画館文化が根付いている年代はその価値を知っているが、それを経験しない世代の事を考えると映画館に足を運ぼうとする若者が減るのは止められない状況がある。

・時間と空間による拘束のハードルがあるが、そのハードルを超えるからこそ「映画館で観て良かった。」という経験が得られる。

(日沼支配人)

・映画館の空間は特別。不特定多数の人と感情を共有しながら、非日常の中で観られる映画館というものはとても良いものだと思っている。

(友岡統括責任者)

・一番身近にありすぐにアクセスできるが、簡単に非日常に入れる。それが映画館の魅力なのではないか。そういった空間を残していくことは、地方都市のためにも必要。

    ・若者を振り向かせるために取り組んだ事はあるか。

(日沼支配人)

前橋で制作し前橋が舞台の映画を上映したところ、地元の若者が中心になり自発的に活動をしてくれた。

(友岡統括責任者)

若い人達との繋がりは、小さい映画館だからこそ独特の関係が出来上がる。

(日沼支配人)

いろいろな団体に声がけをして作品を上映している。それにより地域との繋がりもできる。

(友岡統括責任者)

作品に対する“愛”を感じる。文化を支える人間には必要な事だと強く感じた。

(日沼支配人)

「こういうことを知ってもらおう」「こういった事を世の中に出して行こう」と、皆さんにも感じてもらえるような映画選択をしている。

(友岡統括責任者)

芸術の世界は儲かっているのはほんの一握り。商業的とは言えないが、そうではない所に良質な表現はたくさんある。それを何とかして多くの人に目をつけていただきたい。そういう作品をセレクトしていただき、ありがたい。

 

【意見交換】

(参加者A)若い人をどうしたら映画館に呼べるかということについての提案。

学生映画を利用して学生自体を当事者にしてしまってはどうか。

(日沼支配人)

地域を巻き込んだ映画を上映したことはある。どれも成功している。これからも取り組みたい。しかし、コロナ禍で難しい状態。

 

(参加者B)映画館で映画を観る魅力はテレビやネットと何が違うのか

(日沼支配人)

映画館で観る環境は、家庭では難しい。音響、映像、映画館の中は非現実的で、不特定多数の人と感情を共有できる。感情が溢れやすく、作品が別のものとなる。

(友岡統括責任者)

コンテンツ自体は全く変わらないが、環境や条件によってもたらされる集中力が想像以上に違う。

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更新日:2022年03月16日