令和7年度第2回前橋市社会教育委員会議

審議会名

前橋市社会教育委員会議

会議名

令和7年度第2回前橋市社会教育委員会議

日時

令和7年8月8日(金曜日) 午後1時30分から午後4時30分

場所

前橋市中央公民館 ホール

出席者

(委員側)

佐藤議長、茂木副議長、土田委員、栗木委員、張委員、簑輪委員、生方委員

(市教委側)

吉川教育長、酒井指導担当次長、宇次生涯学習課長、事務局員(生涯学習課)

注:今回の会議は、社会教育セミナーを兼ねているため、前橋市職員、前橋市自治会関係者、前橋市生涯学習奨励員、他市町村教育委員会関係者、一般市民等が参加

欠席者

間々田委員、湯浅委員、狩野委員、坂部委員、宮内委員

配付資料

会議内容

(1)開会 

(2)教育長あいさつ 

本日は、社会教育セミナー「人生100年時代の学びを考える」に、多くの皆様にご参加いただき、誠にありがとうございます。現代は、価値観やライフスタイルが多様化し、将来の予測が困難な時代です。そのような中で、私たち一人ひとりが自分らしく、地域社会とともに豊かに生きていくためには、「学び」のあり方を改めて見つめ直すことが求められています。学びは、学校教育に限らず、日々の暮らしの中に息づいており、世代や立場を超えて人と人とをつなぐ力を持っています。本セミナーは、そうした「人生100年時代」にふさわしい学びの姿を探ることを目的として企画いたしました。社会教育の役割や可能性について、参加者の皆様とともに考える貴重な機会となることを願っております。 

本日のプログラムは二部構成となっております。第一部では、「本を通して人がつながり、学び合う」をテーマに、参加者同士がおすすめの本を紹介し合うビブリオバトル(知的書評合戦)を実施いたします。読書を通じた対話と交流を通じて、学びの楽しさと広がりを体感していただければと思います。 

第二部では、大正大学地域創生学部教授であり、東京大学名誉教授でもある牧野篤さんと、本市市立図書館新本館アドバイザー会議委員の吉成信夫さんをお迎えし、社会教育の今日的な課題、公民館活動の意義、そして図書館の果たすべき役割などについて、幅広い視点からお話を伺います。本セミナーを通じて、これからの社会教育の方向性や、地域に根ざした学びのあり方について、皆様とともに考え、共有する場となれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。 

(3)実演「ビブリオバトル(知的書評合戦)」 

地域のコミュニケーションを高め、世代を超えた交流の機会とするとともに、自主的・自発的な読書活動につなげることを目的としているビブリオバトルの実演を小学生1名、高校生1名、社会人2名の計4名のバトラーで行った。 

(バトラー参加者と紹介した書籍) 

・高橋英里さん(東小学校4年) 

No6(ナンバーシックス)」あさのあつこ/著(講談社) 

・竹内芙羽夏さん(市立前橋高3年) 

「それでもぼくらは、屋上で誰かを想っていた」櫻いいよ/著(宝島社) 

・宇治野純子さん(一般) 

「うれし、たのし、ウミウシ。」中嶋康裕/著(岩波書店:岩波科学ライブラリー)  

・中山勝文さん(一般) 

「長いお別れ」中島京子/著(文藝春秋) 

 

(4)対談「人生100年時代の学びを考える」 

前橋市立図書館新本館アドバイザー会議委員の吉成信夫氏と、大正大学地域創生学部教授の牧野篤氏による対談を行った。最初に吉川教育長より、今回の社会教育セミナーの趣旨説明を行い、その後、吉成氏より「図書館はみんなの森なんだ。〜メディアコスモスの実践〜」と題してご講演をいただき、次に牧野氏より「社会教育をとらえ返す〜多元化する社会の土壌を耕す学びへ〜」と題した講演を行った。その後、吉川教育長が進行役となり、人生100年時代の社会教育についての対談を行い、最後に前橋市社会教育委員会議佐藤議長が感想を伝え閉会となった。 

【対談の内容】 

吉成さん 

◯地域での教育活動の背景と取り組み 

・約17年間、小規模な学校を運営。地域は広く、公民館まで車で40分かかる場所。 

・人口減少が進む中、かつては炭焼きなどの仕事で人が増え、学校が次々と設立された。 

・約25年前から関わり始め、学校が統合されていく中で地域間の交流が減少。 

・外部の立場からNPOを立ち上げ、社会福祉士と連携し、地域住民と混ざり合うプログラムを開始。 

〇 子どもと地域の交流活動 

・週休二日制が始まった2001年頃、子どもたちの居場所づくりとして活動を展開。 

・公民館の職員が学校を回って子どもを集める活動を実施。定員40人のバスに対し、応募は100人以上。 

・弁当持参で川遊びや学生ボランティアとの交流などを行い、夕方にバスで帰宅。 

〇 世代間交流の実現 

・婦人会のお母さんたちにも参加を依頼。快諾の条件として「牛で踊る」伝統芸能を披露。 

・小学生からおばあちゃんまで約50人が一緒に活動。世代を超えた自然な交流が生まれた。 

・帰りのバスでは「家族対抗歌合戦」のような雰囲気で、校歌をみんなで歌う場面も。 

・こうした交流は、公民館の社会教育の資産として、また学生と地域の関わりからも生まれる。 

・関係性がシャッフルされることで、新しい驚きや発見が生まれる。 

〇 ぎふメディアコスモスの事例 

・ぎふメディアコスモスでも「混ざり合うこと」が特徴。 

・世代ごとに開かれ、一緒に考え、行動する場が多く見られる。 

吉川教育長 

お二人の話から共通して感じたキーワードは、「町を開いていく」「町ににじみ出ていく公共空間」。 

牧野教授 

〇 「混ざる」ことの意味と社会の変化 

・「混ざる」という現象は一回限りではなく、現在の社会状況や学びの流れにも関係している。 

・大量生産・大量消費の時代の効率重視が、今では逆に非効率になっている。 

・疑問を持ち、つながりを求める社会が生まれつつある。 

〇 世代間の分断と再構築の可能性 

・都市化により世代が分断されてきたが、今では多様な世代が地域に存在している。 

・三世代が共に暮らす家庭も増え、新しい社会の可能性が見えてきている。 

〇 「おばあちゃん仮説」と人間の社会的役割 

・山極先生の「おばあちゃん仮説」:人間が子どもを産めなくなっても長く生きるのは、孫の世話をするため。 

・ゴリラの「シルバーバック」などの例を交え、「おじいちゃん仮説」も冗談交じりに紹介。 

・世代を超えた関わりは、単なる世話ではなく、責任を持って最後まで関わること。 

〇 言葉の意味と精神的成長 

・「ジェネレーション」は「生まれる」「発生する」という意味も含み、関係性の発達を示す。 

・年齢を重ねることで若い世代に関わりたくなる自然な欲求が生まれる。 

・十分に関わることで「トランセンデンス(超越的な精神性)」に至る可能性がある。 

・自分の人生でやり残したことを子どもに伝えることで、精神的な満足感を得て、穏やかに人生を終えることができる。 

〇 高齢社会における課題と希望 

・現代社会は競争的で関係性が希薄になり、高齢者が能力を発揮できず居場所を失うことが多い。 

・高齢者が社会で活躍できる場をつくることが重要。 

・地域に帰ることで、子どもたちが待っていてくれるような社会を目指すべき。 

〇 公共空間の役割と地域社会の可能性 

・公民館の中だけで完結せず、社会に開かれた形で展開することが重要。 

・沖縄の「若狭公民館」、公園にビーチパラソルとテーブルを置くだけで人が集まる。 

・図書館なども「現在の居場所」として機能し得る。 

・地域社会や小さなコミュニティが「最後の部分」を支える存在になる。 

吉川教育長 

「場所が大事」「居場所を作ること」「何かを生み出すこと」が重要だと感じている。図書館や公民館に深く関わってきたお二人に、「居場所の作り方」「出番の作り方」について質問。 

吉成さん 

〇 図書館を「居場所」かつ「出発点」として捉える 

・図書館は単なる滞在空間ではなく、何かを始める「出発点」になる場所。 

・ぎふメディアコスモスでは、展示や講座を通じて「感じる」体験が生まれ、それが居場所化につながる。 

・感じたことを言葉にし、記録することで記憶に残り、次の行動へとつながる。 

・無印良品の店内で行っている来訪者が自由にノートに書き込む活動 

・中高生や就活生などが悩みや思いを記録。誰もノートを持ち帰らず、場に残す。 

・その場が「何かが始まる場所」として認識され、リピーターが増加。 

牧野教授 

〇 居場所・出番づくりの本質 

・「面倒くさい」「気が乗らない」という感情は、過去の記憶から来る負担感。 

・それを乗り越えるには、「楽しそう」「ちょっとやってみたい」という気持ちが必要。 

・人の背中を押すような関わり方が、人を動かすきっかけになる。 

〇 居場所づくりの要素 

・感じる体験の提供 

・表現・記録の場の用意 

・自然な関わり方で背中を押す 

・繰り返し訪れたくなる空気感の育成 

〇 「コンパッション(compassion)」の力 

・他者の痛みを自分のものとして感じる力が、人間の本質的な性質。 

・共感を超えた「悲しみの共有」が、居場所や出番を生み出す。それが「ウェルビーイング(幸福)」につながる。 

〇 居場所の循環と社会教育の役割 

・最初は「いるだけ」でも、周囲の関わりがあることで、やがて自分も誰かに関わりたくなる。 

・高効率を求める社会から、立ち止まって関係性を育む社会へ。 

・「面白かったね」という感覚が、次の行動につながる。 

〇 「居酒屋バス」の事例 

・高齢化で利用者が減ったコミュニティバスを「居酒屋バス」に転換。 

・高齢者が夕方に居酒屋へ行き、会話が生まれ、利用者が増加。 

・子どもたちが「車掌役」を務めるようになり、世代間の交流が自然に生まれた。 

・バスが単なる移動手段から、コミュニケーションの場、出番の場へと変化。 

・地域の力で「みんなで一緒にやろう」という循環が育まれている。 

吉川教育長 

・居酒屋バスや「読める図書館」など、ワクワクする居場所づくりの実践例が多数紹介されたことに感謝。 

・事前質問から「紙媒体の将来」と「子どもの読解力低下」について質問。 

吉成さん 

〇 紙とデジタルの共存 

・かつては「すべてデジタルになる」と言われたが、今は紙とデジタルの共存が現実的。 

・教育現場では、調べものにはデジタルが便利だが、深く学ぶには紙媒体が有効。 

・特に古い情報や専門的な文献は、図書館など紙の資料でしか得られないこともある。 

・紙媒体は、情報の信頼性や深さを担保する手段として再評価されている。 

牧野教授 

〇 紙媒体の価値と子どもの視点 

・紙媒体はなくならない。むしろ、今後さらに重要になる可能性がある。 

・小学生の事例:Webで調べた後、紙の図鑑で確認する。「誰が書いたか分からないWebより、紙の方が信頼できる」との声。 

・紙媒体は、歴史の中で鍛えられた情報としての価値があり、子どもたちもその重要性を理解し始めている。 

〇 公民館報の事例 

・地域で紙の公民館報を発行。SNSでも情報発信しているが、紙はやめられない。 

・折り込みで情報を偶然目にすることで、地域とのつながりが生まれる。 

・「自分は行かないけど、こういうことをやっているんだな」と思ってもらえるだけで、応援団的な存在が生まれる。 

・紙媒体は、競争的な情報発信ではなく、信頼性と継続性を持って伝わるメディア。 

吉川教育長 

・紙とデジタル、それぞれの良さを理解し、世代を超えて学び合うことが大切。 

・社会教育委員会からの答申内容(社会教育施設、生涯学習推進、地域に根ざしたビジョンづくり)にも触れ、佐藤博之議長に感想を依頼。 

佐藤社会教育委員会議議長 

・職員が自分の個性を活かして仕掛けをしていることが、社会教育の現場づくりにおいて非常に重要。 

・ぎふメディアコスモスや図書館の司書による、市民の声を反映したしかけが印象的。 

・社会教育の定義と役割 

・牧野先生が第四期教育振興基本計画に基づき、社会教育の意義を明確に語ってくれたことに感謝。 

・「地域の土壌を耕し、協力し合い、関係を築くための最も大切な働き」という定義が、地域づくりの視点を与えてくれた。 

・ウェルビーイング(Well-being)の視点 

・社会教育が個人の幸福を支えるものであるという視点は、今後の社会にとって非常に重要。 

・具体的な事例を多く聞けたことから、社会教育委員会議内で共有し、議論を深めていきたい。 

・居心地の良い、ひとりひとりが楽しめる社会教育施設を継続していきたい。 

 

(5)閉会 

 

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更新日:2025年09月10日